APPENDIX II — 年表
付録2 ― 年表
Timeline of Forms — From Antiquity to the Present
紀元前4世紀のアゴラから現代の生成AIまで、人類が「型」をどのように発明し、改変し、継承してきたかをたどる年表である。各出来事を5つのメタ型に対応づけ、社会変容の長い系譜を一望できるように構成した。
140件収録出来事
9時代区分
5型カラー分類
2,400年時代幅
出来事の年代は、起点となる年もしくは決定的な出版・制度化の年を採用した。同年に複数の出来事が並ぶ場合は、メタ型の重要度順に配列している。年代表記は西暦、紀元前は「BC」、世紀単位は「c.」を用いる。各出来事の「メタ型」分類は、本連載のなかでその出来事がどのかたちの系譜に位置づけられているかを示し、それゆえ単一の本質的属性ではなく文脈依存の判定である。
ERA I — ANTIQUITY & MEDIEVAL
第1期 古代・中世BC4C–15C
ポリスのアゴラ、修道院、大学、市場という、社会の最初期の「型」が生成された時代。場・媒介・物語の三型が、まだ未分化のかたちで重なり合っていた。
BC5C
古代アテナイでアゴラが政治・経済・社交の中心として機能。市民が集う公共空間の祖型となる。
場
#006
BC335
アリストテレス『政治学』。ポリスを共同体の型として論じ、「スコレー(余暇)」を市民活動の前提として位置づける。
場
#018
BC4C
プラトンのアカデメイア、アリストテレスのリュケイオン。学問の場の祖型。
場
#014
BC4C
ヒポクラテス派の医療と倫理。専門的媒介者と一般市民を区別する最初期の枠組み。
媒介
#024
BC1C
ウェルギリウス『アエネーイス』。建国神話を国家アイデンティティの物語として編む。
物語
#045
529
ベネディクトの戒律成立。修道院が祈り・労働・学びの統合された場の型として確立。
場
#014
1088
ボローニャ大学創設。学生・教師ギルドとして、媒介者再生産の制度的祖型となる。
媒介
#014 #036
12C
パリ・オックスフォード等、中世大学の成立。学問領域と媒介者を再生産する場が制度化される。
媒介
#014
16C
千利休、侘び茶の様式を大成。極小の茶室を一期一会の凝縮された場とする。
場
#009
ERA II — EARLY MODERN
第2期 近世1517–1799
活版印刷と宗教改革、コーヒーハウスと近代公共圏、メートル法と標準化。複製と公共圏と規格という、近代社会の三大インフラがここで生まれる。
c.1455
グーテンベルク、活版印刷で42行聖書を印刷。複製技術が知の独占を破る。
開き
#078
1517
マルティン・ルター『95カ条の論題』。印刷術の力で短期間に欧州全土へ拡散、宗教改革の起点となる。
開き
#078
1650s
英国にコーヒーハウスが普及。階級を超えた議論の場として近代公共圏の原型を形成。
場
#007
1660
王立協会(Royal Society)創設。科学の制度的インフラの祖型。
支え
#026
1751
ディドロ・ダランベール編『百科全書』刊行開始。知の並列化と物語化を結ぶ。
物語
#074
1791–99
フランスでメートル法制定。計量単位の標準化が、近代国家の見えないインフラとなる。
支え
#062
1776
アメリカ独立宣言。万人の権利という普遍的物語が政治の言語に組み込まれる。
開き
#087
ERA III — NINETEENTH CENTURY
第3期 19世紀1801–1899
産業革命と都市化が「支え」と「媒介」の型を爆発的に増殖させた世紀。看護学・社会福祉学・図書館学が独立した学問領域として誕生し、万博と公園が公共の場の新形を提示する。
1857
F.L.オルムステッド、セントラルパーク設計開始。都市公園を民主主義の余白として制度化。
場
#019
1851
第1回ロンドン万国博覧会。各国の規格と産業を比較・並列化する装置として万博が誕生。
支え
#063
1860
ナイチンゲール、ロンドン・聖トーマス病院に看護学校を設立。看護を独立した学問領域へ。
媒介
#036
1863
国際赤十字創設。国境を越える媒介者の制度化が始まる。
媒介
#024
1867
マルクス『資本論』第1巻刊行。物語と支配の関係を構造的に暴く批判の言語が成立。
物語
#051
1876
メルヴィル・デューイ、十進分類法を発表。並列化=編集の現代的祖型。
支え
#074
1884
国際子午線会議でグリニッジが本初子午線に。標準時という見えないインフラ。
支え
#062
1889
ジェーン・アダムス、シカゴにハル・ハウス設立。セツルメント運動が場と媒介を結ぶ。
場
#030
1898
エベネザー・ハワード『明日の田園都市』。編集された都市の理念を提示。
支え
#075
ERA IV — EARLY 20TH CENTURY
第4期 20世紀前半1900–1949
通過儀礼の理論化、組立ラインによる大衆化、複製技術の哲学的批評。学問と産業と思想が、それぞれの領域で「型」を体系化していった世代。
1900s
シカゴ学派社会学形成。都市と移民の媒介者像を実証研究で確立。
媒介
#030
1917
メアリー・リッチモンド『ソーシャル・ダイアグノーシス』。ソーシャルワークが学問領域として独立。
媒介
#037
1909
ファン・ヘネップ『通過儀礼』。境界・分離・統合の三段階モデルを提示。
場
#012
1913
ヘンリー・フォード、移動組立ライン導入。T型自動車の大衆化が始まる。
開き
#084
1919
バウハウス設立。芸術と技術を統合し、大衆化されたデザインの教育機関を創出。
開き
#086
1921
賀川豊彦、神戸消費組合(後のコープこうべ)設立。日本の協同組合運動と中間支援の先駆。
媒介
#031
1928–29
森清、日本十進分類法(NDC)を発表。日本独自の編集インフラ。
支え
#074
1935
AA(アルコホーリクス・アノニマス)設立。自助グループ運動の祖型。
媒介
#027
1936
ベンヤミン『複製技術時代の芸術作品』。アウラの消失と大衆化の倫理を論じる。
開き
#079
1946
ヴィクトール・フランクル『夜と霧』。意味の物語が人を生かすという臨床的洞察。
物語
#049
1947
ISO(国際標準化機構)設立。グローバル規格の現代的支えが誕生。
支え
#064
1949
ジョセフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』。「英雄の旅」原型を提示。
物語
#045
ERA V — POSTWAR / 1950s–60s
第5期 戦後・1950s-60s1950–1969
国際機関と現代美術と公共圏理論。冷戦期の科学・技術・芸術・社会理論が、それぞれの「型」を本格的に整える。マクルーハン、ハーバーマス、ハーディンが現代思想の地形を描いた。
1955
ドイツ・カッセルでDocumenta開始。戦後現代美術を5年ごとに並列化する物語装置。
物語
#054
1960
第11回CGPMで国際単位系(SI)採択。メートル法の世界的標準化が完成。
支え
#062
1961
米国でPeace Corps設立。国際的媒介者を国家プログラムとして組織化。
媒介
#024
1962
マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』。印刷文化の構造を論じ、メディア論を切り拓く。
支え
#072
1962
ハーバーマス『公共性の構造転換』。コーヒーハウスを近代公共圏の起源として再評価。
場
#007
1962
トーマス・クーン『科学革命の構造』。パラダイム転換論で変化の構造を理論化。
物語
#001
1960s
大衆出版・テレビの世界的普及。物語の流通速度が劇的に上がる。
開き
#079
1968
ギャレット・ハーディン「共有地の悲劇」発表。コモンズ論議の起点となる。
支え
#067
1969
アポロ11号月面着陸。テレビ中継で全世界が同じ映像を共有する経験。
開き
#090
ERA VI — 1970s–80s
第6期 1970s-80s1970–1989
解釈人類学と当事者運動、社会起業概念の登場。Project GutenbergとWWWの種が蒔かれ、創られた伝統と記憶の場が学問の中心テーマとなる。型の批評と新生が同時並行で進んだ時代。
1971
マイケル・ハート、Project Gutenberg開始。電子的複製による開きの最初期実験。
開き
#080
1973
クリフォード・ギアツ『文化の解釈学』。「厚い記述」が文化研究の方法論を一新。
物語
#053
1973
ロバート・シラー、不合理な熱狂と物語の関係に着目し始める(後のNarrative Economicsへ)。
物語
#042
1973
マーク・グラノヴェッター「弱い紐帯の強さ」発表。媒介ネットワークの社会的価値を実証。
媒介
#033
1971
イヴァン・イリイチ『脱学校化社会』。専門家媒介の制度化が陥る逆説を予言。
媒介
#038
1980
ビル・ドレイトン、Ashoka設立。社会起業家概念を国際的に組織化。
開き
#099
1982
ウォルター・オング『声の文化と文字の文化』。オラリティとリテラシーの構造的差異を論じる。
支え
#082
1983
エリック・ホブズボーム編『創られた伝統』。伝統の多くが近代の発明であることを示す。
物語
#052
1983
リチャード・ストールマン、GNUプロジェクト開始。ソースコードの開きを倫理として提示。
開き
#080
1984–92
ピエール・ノラ編『記憶の場』全7巻刊行。共同体の物語が場所・記念碑・儀礼に宿る構造を解明。
物語
#054
1986
Burning Man開始。一時的共同体としてのフェスが越境出会いの新形態を実験。
場
#016
1986
イタリアでSlow Food運動発足。食文化を継承する物語循環の現代的実装。
物語
#053
1987
EUErasmus Programme開始。欧州学生の越境を制度化。
場
#013
1987
ACT UP結成。HIV/AIDS当事者運動が物語と政治を結ぶ。
物語
#056
1987
Hearing Voices Network創設。幻聴の当事者を主体に戻す世界的ネットワーク。
物語
#058
1989
ティム・バーナーズ=リー、WWWを提案。ウェブの種が蒔かれる。
開き
#070
ERA VII — 1990s
第7期 1990s1990–1999
コモンズ理論、状況的学習、Linux、インフラの民族誌。インターネットの大衆化が、開きと支えの両方を再定義した10年。
1990
エリノア・オストロム『コモンズのガバナンス』。自治的公共財管理を実証。
支え
#067
1990
マイケル・オリバー『障害の政治』。障害の社会モデルを提示。
物語
#056
1991
レイヴ&ウェンガー『状況的学習』。実践共同体(CoP)を理論化。
媒介
#039
1991
リーナス・トーバルズ、Linuxカーネル公開。開き型開発の象徴。
開き
#080
1993
キャロル・ギリガン『もうひとつの声』日本語訳刊行(原著1982)。ケアの倫理が広く参照される。
物語
#057
1995
アリス・ウォーターズ、Edible Schoolyard開始。学校に食の場を組み込む。
場
#019
1997
ロン・メイスら、ユニバーサルデザイン7原則を発表。開きをデザイン理念として定式化。
開き
#086
1999
S.L.スター&K.ルールデルー『分類とその帰結』。インフラの民族誌を確立。
支え
#066
1999
ローレンス・レッシグ『CODE』。コードを法と並ぶ規範として論じる。
開き
#081
ERA VIII — 2000s–10s
第8期 2000s-10s2000–2019
Wikipedia、Creative Commons、ProPublica、Bellingcat。デジタル化が知と物語と検証を一気に開いていく。同時に、シェアエコノミーや当事者運動も新しい型として制度化される。
2001
Wikipedia始動。集合知による百科事典型の開きが実装される。
開き
#080
2001
Creative Commons創設。著作権の段階的開きをライセンスで制度化。
開き
#081
2005
ロブ・ホプキンス、トランジション・タウン運動を英国トットネスで開始。
物語
#047
2005
スタンフォード大学にd.school設立。デザイン思考を高等教育に制度化。
媒介
#040
2008
米国でProPublica創設。非営利調査報道が新しい可視化メディアとして登場。
開き
#092
2008
Singularity University設立。指数的技術進化を扱う媒介者教育機関の登場。
媒介
#040
2008
Archive of Our Own (AO3)始動。ファンが運営する物語循環基盤として成長。
物語
#046
2009
Skoll FoundationがSocial Entrepreneurship Awardを国際的に確立。
開き
#099
2009
エストニアX-Road本格運用。政府サービスの相互運用基盤として世界の参照点に。
支え
#070
2010
ブレネー・ブラウンTED講演がバイラル化。脆弱性のナラティブが公共言語となる。
物語
#042
2014
Bellingcat創設。市民調査ジャーナリズムが国際報道を変える。
開き
#093
2014
エストニアe-Residency開始。市民権の概念をデジタルで開く実験。
開き
#070
2019
ロバート・シラー『ナラティブ経済学』。物語が経済を駆動するという主張を学術的に整備。
物語
#042
ERA IX — 2020s
第9期 2020s2020–現在
パンデミックと当事者主導の研究、生成AIによる開きの加速、株主資本主義の見直し。5つのかたちが同時に再構築されつつある現在進行形の時代。
2020
Long COVID Patient-Led Research Collaborative結成。当事者主導研究が国際的注目を集める。
物語
#026 #058
2022
Patagonia創業者シュイナード「地球が唯一の株主」宣言。資本主義の物語を書き換える試み。
物語
#048
2022
ChatGPT公開。生成AIが言語と知の開きを一気に大衆化する。
開き
#080 #097
2023–
生成AI公共インフラ化の議論が世界各国で本格化。新しい支えの型が形成途上に。
支え
#097
2020
ローマン・クルツナリック『The Good Ancestor』。未来世代への責任を物語として広める。
物語
#098
2020–
リモートワーク常態化により、サードプレイスとオフィスの境界が再編成される。
場
#008
2020s
英国NHSでSocial Prescribing(社会的処方)が制度的に拡大。媒介者の医療領域への組み込み。
媒介
#027
2020s
リジェネラティブ・デザインが建築・農業・経営に拡大。再生の物語が制度化されはじめる。
物語
#048
2015–2020
西村勇也、ソトコト連載「ソーシャルイノベーションの5つの型」全60回。本連載の前史として5メタ型・15サブ型を抽出。
開き
#005
該当する出来事が見つかりません。検索語を変えてお試しください。